その谷部金次郎様と記念写真です。
谷部様はとっても気さくな方です。
ご覧の通り、とてもスリムな方です。
「やはり節制しております。自分が健康でなければよい料理もつくれませんから。全くメタボは無縁です」ですって。
すぐ側では、地元ホテルのかなりふっくらした総料理長が身を縮めるようにして苦笑い。
この日は、天皇両陛下の日常のお食事(和食)を宮内庁大膳課で26年作り続けた料理人の谷部様にインタビューです。
場内のお客様は、宮中関係者でなければ食べられないお料理の数々を召し上がり、私はステージで谷部様から天皇様のプライベートをあれこれ伺いました。
天皇様はお箸はふつうの柳箸を使用され、しかも数回うっすら色がついても続けて使用されるということや、お料理のメニューに決して希望はおっしゃらないこともお聞きしました。
大膳課を信頼していらっしゃるのでお毒見役などはいません。
宮中ことばの「おすべり」はお下がりというような意味です。
私たちが日常何気なく使用している「おひや(水)」「おかか(鰹節)」「むらさき(お醤油)」「おこうこ(漬物)」はすべてかつて宮中で言われていたものだそうです。
ええっっ、そうだったのかぁとビックリ。
朝は洋食で、昼か夜のどちらかが和食、両陛下と侍医の方の分とお代わりの分と5~6食分用意するのだそうです。
陛下はお酒はいっさい口になさらず、皇后様が夜のお食事時に召し上がっていたとのこと。
間食はなく、日々の食事も質素を旨とした方だと知りました。
特にお好きだったのが鰻の茶漬けで、召し上がって数日すると「あれ、まだあるの?」とお聞きになったというエピソードや、谷部様が陛下の目の前でシソの天ぷらを揚げたときは陛下のオーラに圧倒され、手が震えて散々だったということもお話してくださいました。
谷部様を通してその向こうに、かつての今上天皇様のお姿を思い浮かべることができ、あたたかい気持ちになったことでした。
またおもてなしの心とは、例えば炊き立てのご飯を差上げるということでいいのだそうです。
既製品の中に一品でも手作りのものを用意する気持ちがあればいいとお聞きしてホッとしました。
地元のものを大切に食べること、旬のものを買うこと、国内産のものを選ぶ気持ちはこれからも料理の世界に生きるものとして伝えつづけたいこだわりだとお話しくださいました。
仕事とは言え、司会者でなければこのような方と親しく会話することなどできませんでしたから、幸せに思った夜でもありました。