近くに来たから、と言ってふらっと会いに寄ってくれました。
とても目立つオレンジ色のコートを着ててよく似合います。
風邪予防の大きなマスクをしていたせいかもしれませんがあまり覇気がありません。
「コートの明るい色で元気出さなきゃと思って」とポツリポツリと話し出しました。
10年近い司会経験なのに、社長に注意されたり会場からダメ出しされることもあって、壁に突き当たっている気がするということでした。
彼女は優しさやあたたかさがあるし謙虚で穏やかといった雰囲気を持つ人なのですが、それがともすれば「自信のなさ」に見えます。
声量もある方ではありません。
本人は中堅司会者として自信も持っているし、堂々としているつもりですと話しました。
でも、打合せの席で確認のために同じことを聞き直したら、お客様に「ほんとにこの人、大丈夫なのだろうか」と不安がられ、司会者を代えて欲しいと言われたそうで。
「好きな仕事だからこのまま辞めたくないし」と言います。
もちろん辞める必要はなく、壁を感じる力があるってことは伸びる力もある。
「自信なさそうに見える」理由がわかったら、解決策に向かうことができます。
「マイクに声が乗らない」と言われたというのはその時の音響担当者の好みもある。
マイクの指向性を理解した上でスピーカーを通した自分の声をよく聞くこと。
そこの会場から指名される別の司会者は声が大きいから、その人のボリュームに周りが慣れてる。
MCの上手さとか声自体の良し悪しより、機転が利いて安心できることのほうが会場にとってもお客様にとっても大事。
ハプニングやトラブルにも落ち着いて平気な顔しててきぱき対処できるかどうかも評価対象。
お客様と一緒になって遊んじゃうような大胆さが彼女には足りない気がしました。
慎重できまじめなところが不安オーラになっているのかもしれません。
そのうちに彼女の司会を見学させてもらうことにしました。
司会進行そのものが下手な人ではないはずだから、別な何か足りないものがあるかも。
私がかつて先輩から教わったことを少しずつ後輩に渡していく時代になってきているんだなぁと思いました。