「嫁っこ きたー! 」
横になっていた人も、雑誌を見ていた人も廊下やホールに移動を始めました。
「あれぇ、なんぼきれいだ」。
施設中の注目の中、花嫁さんはそろりそろりと一つのお部屋に入りました。
「おじいちゃん、おじいちゃん! 大変だ!」
体を揺さぶられて目を覚ましたおじいちゃん、ぽかんとしてましたが、やがて涙ポロポロ。
どうしても実際に晴れ姿を見てもらいたいという新郎新婦の気持ちが実現したサプライズ。
最初は驚きすぎて心臓発作でも起こすんじゃないかと心配したそうです。
おじいちゃんの息子、50代の新郎は同世代の女性と結婚することになりました。
その女性はおじいちゃんの入っている施設のスタッフさんです。
自分たちの身の丈に合った結婚を、と 華々しい披露宴ではなくいつも勤務している施設でお祝いの会を開くことにしました。
司会は施設のスタッフです。
『お金はないんですけどこんなことをやりたいんです』と相談され、大いに感激した私。
司会のことばを作りお祝いの会の進行を組み立てました。
そのスタッフさんから様子を聞きながら、涙が出ちゃいました。
二人の姿に手を合わせる人がいたり、反応のなかった人が表情を出したという話にも胸がキュン。
利用者さんの歌あり踊りあり。
ふだん食の細い人がお赤飯に箸をつけてくれたということも。
私のスキルが役に立ったことが幸せ。